本研究は、抗体医薬の投与による癌治療という、いわゆる受動免疫による治療展開ではなく、能動免疫という観点に立ち、さらには患者個人に最適化した癌免疫療法の確立を目的とする。今年度は、シェーグレン症候群にMALTリンパ腫を併発した患者の骨髄細胞から単離したリコンビナントFab(AHSArFab)が認識するミモトープ配列(LSYLEP)を含むペプチドを合成し、ペプチドーキャリアタンパク質複合体のマウスへの免疫により誘導された抗体レパートリーの機能と構造について解析した。LSYLEPW-KLH複合体で過免疫したBALB/cマウス脾細胞より抗体遺伝子ライブラリーを構築した。抗体提示ファージライブラリーは抗原陽性のHeLaS3細胞あるいはLSYLEPW-BSAに対してパニングを行い、rFabクローンのスクリーニングは間接蛍光抗体法あるいはELISA法により行った。陽性クローンについては可変部領域のシーケンス解析もあわせて行った。HeLaS3パニングで得られたrFabはHeLaS3生細胞に対するAHSArFabとの二重染色により染色部位の重複が認められた。LSYLEPW-BSAパニングで得られたrFabはAHSArFabとペプチドの反応を競合的に阻害した。ミモトープペプチド免疫で誘導されたrFabのエピトープがAHSArFabとオーバーラップしていることが示唆された。また、陽性rFabとAHSArFabの可変部領域の相同性は約50~70%であり、これらのrFabはHeLaS3あるいはミモトープペプチドに対してAHSArFabより高い親和性を有していた。以上の結果より、AHSArFabミモトープペプチド免疫によりAHSArFab認識抗原に対して高親和性で反応するrFabの作製が可能であることが示された。
|