研究概要 |
本研究は、抗体医薬の投与による癌治療という、いわゆる受動免疫による治療展開ではなく、能動免疫という観点に立ち、さらには患者個人に最適化した癌免疫療法の確立を目的とする。今年度の研究計画では、リンパ腫患者の自己腫瘍と反応するリコンビナント抗体の単離と臨床応用可能なペプチドワクチンの作製に関する検討を行う予定であったが完遂することはできなかった。これまでに得られた成果について記述する。リンパ腫患者の骨髄細胞cDNAは連携研究者の金沢医大正木准教授より提供して頂いた。これを出発材料として、抗体遺伝子断片の増幅とIgG1, kappa(K)/ lambda(L)ライブラリー構築を行った。ライブラリーサイズは、それぞれ(K)1.5x10^7cfu,(L)5.7x10^6cfuであった。当初の計画では自己腫瘍に対してパニングする予定であったが入手できなかったため、5%(v/v)フォルマリン固定HeLa細胞を使うこととし、同細胞に対する4ラウンドのパニングを行った。その結果、(K)では257倍、(L)では32倍のファージタイターの上昇が認められた。最終ラウンドのフファージを大腸菌に感染させ、ファージミドDNAを回収し、可溶性Fab発現型に変換した後、大腸菌に再導入した。プレートよりシングルコロニーを30個選択し、可溶性Fabを調製ののち、フォルマリン固定HeLa細胞に対する反応性を指標にスクリーニングした。その結果、(K)ライブラリーから5個の陽性クローンが得られたが、(L)ライブラリーからは陽性クローンは得られなかった。可変部シークエンス解析の結果、5個の陽性クローンは同一であることが明らかとなった。今後は、対応抗原解析、エピトープ解析、ペプチド合成、キャリアタンパク質複合体のマウスへの免疫により、臨床応用の可能性について検討していくつもりである。
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