1. 大腸菌のスペルミジン輸送系はPotABCDの4種の蛋白質より成るABCトランスポーターであり、そのうちの基質結合蛋白質PotDとエネルギ0供給蛋白質であるPotAの構造をこれまでに明らかにしてきたので、本年度はチャネル形成蛋白質であるPotB、PotC蛋白質中の活性に関与するアミノ酸残基を同定し、11種のアミノ酸残基の機能を解析した。その結果、PotB Trp^8が膜への挿入に必須であること、PotB Tyr^<43>、PotC Trp^<46>、Ser^<196>がPotDとの相互作用に、PotB Leu^<110>、Tyr^<261>、PotC Asp^<108>、Asp^<198>、Asp^<199>がスペルミジンの認識に、PotB Trp^<100>、Tyr^<261>、PotC Asp^<108>、Glu^<169>、Asp^<198>がPotAのATPase活性に関与していることが明らかとなった。 2. 興奮性神経伝達物質グルタミン酸の受容体の一種であり、神経可塑性の中心的役割を担うNMDA受容体は、スペルミンにより活性化を受け、イフェンプロジルにより阻害を受ける。NMDA受容体はNR1サブユニット2個とNR2サブユニット2個からなるテトラマーである。アミノ酸置換NMDA受容体に対するスペルミンとイフェンプロジルの効果測定と、モレキュラーシミュレーションにより、スペルミンはNR1サブユニットのN末端に位置するR-domainの中心部の溝に結合し、またイフェンプロジルはNR2BサブユニットのR-domainの中心部の溝に結合してその構造を変えることにより、作用を発揮することを明らかにした。
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