研究概要 |
1.大腸菌に存在するプトレスシン(PUT)輸送系PotFGHIとPuuPによるPUT取り込みの性質を比較した。両方の系ともPUT特異的な基質認識性を示し、PUTに対するKm値はPotFGHIは0.53μM、PuuPは6.2μMであり、PotFGHIの方が高い親和性を示した。0.4%グルコースと10mM PUT存在下で培養するとPuuPを高発現する菌ではPUTとスペルミジンが過剰蓄積し、細胞増殖阻害がみられたが、PotFGHIを高発現する菌ではあまり蓄積せず、PUTによる取り込みのフィードバック阻害がみられたことから、PotFGHIはPUT取り込み系として機能すること、および、グルコースが培地中に存在せず、PUTが存在するときにはPuuPが増殖に必須であることが明らかとなった。 2.興奮性神経伝達物質グルタミン酸の受容体の一種であるNMDA受容体は、NRIとNR2のテトラマーからなり、Na+と共にCa2+をニューロンに流入し、記憶形成及び脳虚血痔の症状悪化に関わっている。スペルミン(SPM)はこのNMDA受容体のN末端に位置する調節領域に結合し、活性を促進する。一方,脳機能改善薬であるイフェンプロジル(IFN)は同様に調節領域に結合し、その活性を阻害する。今回はSPM及びIFNが調節領域NR1RとNR2BRのどの部位に結合し、活性を調節しているかを変異体の活性測定に基づいて検討した。調節領域は貝殻構造を取っているが、NR1RではSPMがその溝部分に結合し,IFNはN末端側の表面に結合したのに対し,NR2BRでは、IFNが溝部分に結合し,SPMがC末端側の表面に結合した。溝部分に結合すると調節領域の構造が大きく変化すると想定されるので、NR1RのSPMによる構造変化がチャネルのオープンに関与し、NR2BRのIFNによる構造変化がチャネルのクローズに関与することが明らかとなった。
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