ダニのアレルゲンであるDerP2がMD-2の代わりにTLR4と結合してlipid A部位の認識およびシグナル伝達に関与するとの報告がされたので、ダニアレルゲンがエンドトキシンの構造認識に関わる可能性について解析するために測定系の確立を試みたが、現状ではさらなる検討が必要な段階である。 修飾型エンドトキシンが病原細菌内で造られる際に重要な修飾酵素の活性調節機構を解析した。エンドトキシン脱アシル化酵素PagLは潜伏性を有しているが、これまでの研究でPagLの細胞外ループ領域のアルギニンをアラニンに置換した変異体などでは潜伏性を失うことを見出している。免疫沈降実験により潜伏性を有するPagLはLPSと共沈するけれども、潜伏性を失った変異体PagLはLPSと共沈しなかった。従って、PagL潜伏性に外膜上でのLPSとの会合状態が重要である可能性が考えられた。この成果は細菌の外膜酵素の活性調節に関して新しい視点を与えるものである。 また、PagLの潜伏性の生理的意義について解析した。サルモネラに潜伏性のある野生型PagLあるいは潜伏性を失った変異体PagLを発現させた。それぞれの細菌株の膜透過性を、細胞内に入ると蛍光を発する脂溶性薬剤の透過率を測定することにより検討した。その結果、PagLが潜伏化していることは細菌の膜のバリアー機能の維持に重要であることが明らかになった。エンドトキシンの修飾は細菌の病原性にとってプラスとマイナスの両面で働きうるので、その厳密な調節が必要であることが示唆された。
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