研究概要 |
血清マンナン結合タンパク質(MBP)は、Man/GlcNAc/Fucに特異的なCa^<2+>依存性のレクチンであり、先天性免疫に働く。著者らはすでにマウス腎臓よりMBPの新規内在性リガンドとして高度に糖鎖付加されたマトリックスメタロプロテアーゼであるメプリンを単離同定している。本年度は、MBPによるメプリンのプロテアーゼ活性阻害機構の解析を行った。 まず、カゼイン、副甲状腺ホルモン、コラーゲンIVおよびゼラチンを基質として、メプリンによる加水分解に対するMBPの影響を、SDS-PAGEにより調べた。その結果、これらの基質はいずれもメプリンによる分解を受けたが、その分解はMBPにより濃度依存的に阻害された。また、このMBPによる阻害は、マンノースの添加により解除された。次に、低分子合成基質であるsuccinyl-Ala-Ala-Ala-methylcoumarylamideを基質として、メプリンのアミダーゼ活性に対するMBPの影響を測定したところ、MBPはアミダーゼ活性を阻害しなかった。 以上の結果は、基質がタンパク質の場合、MBPはメプリンの活性中心付近の糖鎖に結合することにより基質の活性中心への接近を阻害し、基質の分解を妨げるが、基質が低分子の場合には、MBPがメプリンの糖鎖に結合していても基質は活性中心に接近することができるため、MBPはメプリンの酵素活性を阻害できない、ことを示している。 さらに、植物レクチン、ConA, PNA, LCA, AALについてメプリンのコラーゲンIV分解に対する影響を調べた。その結果、ConAにより、コラーゲン分解が阻害され、次いでAAL、LCAにより、ある程度阻害され、PNAは阻害効果を示さなかった。これらの結果はMBPによるメプリンのプロテアーゼ活性阻害にハイマンノース糖鎖、フコース糖鎖が関与していることを裏付けている。
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