Bacillus cereus菌由来SMaseの基質認識機構を詳細に調べるために、基質結合または膜結合への関与が予想されるP26とW28、金属イオンとの配位を伴って膜結合への関与が予想されるD100をそれぞれG(P26G)、A(W28A)、およびN(D100N)に置換した酵素を調製した。次いで、真の基質であるスフィンゴミエリン(SM)やリゾホスファチジルコリン(C_<16>-LysoPC)とTriton X-100との混合ミセル、および合成基質であるミセル状2-N-Hexadecanoylamino-4-nitrophenylphosphocholine(HNP)を基質に用いて、置換体の酵素反応パラメーターを測定し、WTの結果と比較した。SMを基質に用いた場合、すべての置換体においてV_<max>値は若干増大しK_m値は増大した。C_<16>-LysoPCを基質に用いた場合、V_<max>値はすべての置換体で減少し、K_m値はW28Aのみで増大した。さらに、HNPを基質に用いた場合、V_<max>値はP26GとD100Nで減少しW28Aで増大したが、K_m値はすべての置換体で大きく増大した。以上の結果、アミノ酸残基を置換したことによる影響は、V_<max>値に比べてK_m値の方が非常に大きく、その値は増加する傾向にあったことから、これら3つのアミノ酸残基は基質との結合を強めることがわかった。また、D100は金属イオンと配位することから、D100Nの加水分解作用に及ぼす金属イオン(Mg^<2+>、Ca^<2+>、Co^<2+>、およびZn^<2+>、)の影響を調べた結果、D100Nの酵素活性はWTに比べて約半分に低下したものの、金属イオンの解離定数はほぼ同じ値になり、D100と配位する金属イオンは酵素活性に影響しないことがわかった。
|