本研究は、活性酸素による情報伝達システムにおけるO-GlcNAc化修飾タンパク質の機能的重要性とO-GlcNAc化の制御機構について明らかにすることを目的とする。本年度は酸化ストレス誘導アポトーシスにおけるO-GlcNAcタンパク質の役割について、ヒト肝ガン由来細胞であるHepG2を用いて検討した。まず、HepG2に酸化ストレスとして亜ヒ酸ナトリウムを添加したところ、クロマチン凝縮やPoly-ADP-ribose polymerase(PARP)の切断が生じ、アポトーシスがおきることが明らかになった。またO-GlcNAc化タンパク質は、亜ヒ酸ナトリウム投与により増加した。N-アセチルグルコサミニダーゼ阻害剤(PUGNAc)を添加して細胞内のO-GlcNAcタンパク質を増加させたところ、亜ヒ酸ナトリウム投与によるアポトーシスが促進することが明らかになった。以上より、酸化ストレスによって引き起こされるアポトーシスにおいて、O-GlcNAcタンパク質が何らかの促進効果を示すことが示唆された。そこで、アポトーシスにおけるO-GlcNAcタンパク質の役割について検討するため、ストレス応答タンパク質であるheat shock protein 60(HSP60)に着目し、その発現変動を調べた。その結果、亜ヒ酸ナトリウム投与によりHSP60の発現は増加することが明らかになった。HSP60はO-GlcNAc化タンパク質の一つであるので、このときのO-GlcNAc化修飾について調べたところ、亜ヒ酸ナトリウム投与によりO-GlcNAc化HSP60が増加することが明らかになった。今後、O-GlcNAc化HSP60がアポトーシスに関与しているかどうかを検討する。
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