血管内皮細胞のATP分解酵素活性およびATP分解酵素遺伝子の発現に及ぼす薬物の作用を検討した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)において、HMG-CoA還元酵素阻害薬のフルバスタチンは臨床用量でATP分解酵素であるecto-nucleoside diphosphohydrorasel (CD39)の遺伝子発現とATP分解酵素活性の上昇を引き起こした。この反応はシンバスタチンやプラバスタチンなど他のHMG-CoA還元酵素阻害薬でも観察できた。また、動脈由来内皮細胞、微小血管由来内皮細胞でも認められたことから、血管内皮細胞の共通した応答であると考えられた。CD39は内皮細胞のほかでマクロファージにも発現しているが、その発現はフルバスタチンで影響されず、CD39発現上昇は内皮細胞に特異的であることが判明した。フルバスタチンによるCD39の発現上昇は、RNA合成阻害薬のDRBにより抑制されたことから、遺伝子発現のレベルで調節されていると考えられた。また、FITCで標識した抗CD39抗体を用いてFACSで解析した結果、フルバスタチンは細胞表面のCD39発現量を著明に増大させることが認められた。このフルバスタチンによるCD39活性の上昇は、ゲラニルゲラニルピロリン酸により解除されたことから、HMG-CoA還元酵素阻害作用に起因すると考えられた。そのメカニズムの一つにAMPキナーゼの活性化が関与する可能性が認められ、現在その詳細を検討中である。
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