研究課題/領域番号 |
20590088
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
松岡 功 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (10145633)
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研究分担者 |
蓬田 伸一 高崎健康福祉大学, 薬学部, 准教授 (90250802)
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キーワード | 血管内皮細胞 / 細胞外ヌクレオチド代謝 / CD39 / 遺伝子発現 / HMG-CoA還元酵素阻害剤 / PI3-キナーゼ / Akt / HIF-1α |
研究概要 |
我々はこれまでの研究で血管内皮細胞の主要なATP分解酵素であるecto-nucleoside diphosphohydrolase l(CD39)の遺伝子発現ならびに酵素の活性に影響する生体内液性因子および薬物を検索し、炎症性サイトカインのTNF-α、IL-1βおよびIFN-γがCD39の発現低下をもたらすのに対して、HMG-CoA還元酵素阻害薬のフルバスタチンが臨床用量でCD39の遺伝子発現とATPの分解活性の上昇を引き起こすことを見出した。炎症性サイトカインによるCD39のdown-regulationとフルバスタチンによるup-regulationは、ラットを用いたin vivoの実験系でも大動脈や腸間膜動脈などの動脈標本において認められた。このような炎症性サイトカインによるCD39の機能低下はステロイド性抗炎症薬のデキサメサゾンでは抑制されなかったが、フルバスタチンにより拮抗された。フルバスタチンによるCD39の発現上昇のメカニズムについて検討した結果、HMG-CoA還元酵素阻害薬で活性化されることが報告されているAMPキナーゼの関与は認められなかったが、PI3キナーゼ-Aktシグナル経路およびhypoxia-inducible factor-1α転写因子の関与が示唆された。以上の結果から、炎症部位の血管における病態生理の一つとして血管内皮細胞のCD39の機能低下が存在し、HMG-CoA還元酵素阻害薬の抗炎症を含むpleiotropic作用には血管内皮細胞のCD39の発現上昇が重要な役割をはたすと考えられた。
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