研究概要 |
PEDFは418個のアミノ酸より構成される蛋白であるが、神経保護作用にはアミノ酸残基78-121のペプチドが、血管新生阻害作用にはアミノ酸残基44-77の34merのペプチドが重要な役割を担っていることがin vitroの実験系により明らかとされている。そこでこれらのペプチド領域が実際にin vivoでの関連しているかを明らかとするために、各活性発現ドメインを欠損させた変異型PEDF遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクター(Ad. PEDF△44-121,Ad. PEDF△78-121)を調整し、活性発現部位の有無による神経保護効果のへの影響について検討を行った。すなわち、Ad. PEDF△44-121、Ad. PEDF△78-121、あるいはAd. PEDF(wild type)を線条体に投与し、1週間後にNMDA型グルタミン酸受容体のアゴニストであるキノリン酸を線条体に投与した。Wild typeのPEDF、及びPEDF△78-121を高発現させた線条体では、キノリン酸によるグルタミン酸毒性は強く抑制されたが、PEDF△44-121を高発現させた線条体では広範囲にわたる神経細胞死が観察された。またアポモルフィン誘発回転行動を指標とした行動薬理学的解析においても△44-121による活性の消失が観察された。これらの結果は、従来、血管新生阻害作用の活性ドメインとされていた領域がin vivoでの神経保護作用の発現に重要であることを示唆するものと考えられた。
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