グルタミン酸は中枢神経系における代表的な興奮性神経伝達物質であるが、過剰量のグルタミン酸は神経細胞に対して毒性を有し、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳虚血などにおけるなどの様々な神経疾患における神経変性の共通の機序のひとつと考えられている。アストロサイトに発現するglutamate aspartate transporter(GLAST)やglutamate transpoorer-1(GLT-1)といったグルタミン酸トランスポーターは細胞外グルタミン酸濃度の制御を担う重要な機能分子であり、グルタミン酸毒性軽減に大きく寄与している。我々はこれまでに色素上皮由来因子Pigment epithelium-derived factor(PEDF)がキノリン酸(NMDA型グルタミン酸受容体アゴニスト)毒性や脳虚血による神経細胞死を強く抑制することを明らかとしている。本年度はPEDFによるグルタミン酸毒性軽減作用に神経細胞に対する直接作用だけでなくアストロサイトのグルタミン酸トランスポーターを介した間接的なメカニズムが関与する可能性を推定し、その解析を行った。その結果、PEDFが培養アストロサイトのグルタミン酸取り込み能をGLASTやGLT-1の発現誘導を介して増加させることを明らかとした。またPEDFを作用させたアストロサイトにおいてAKTやErk1/2の活性化が観察された。PEDFによるグルタミン酸取り込み促進作用はLY294002(PI3K阻害剤)やU0126(MEK 阻害剤)により消失したことから、AKTやErk1/2の活性化がその作用発現に関与するものと推定された。
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