緑内障の発症と進行に、網膜循環障害の関与が示唆されている。本研究では、ラットの網膜虚血・再灌流及びNMDA硝子体内投与網膜神経傷害モデルにおいて網膜血管が構造的・機能的に障害されることを示した。これらのモデルでは、視神経節細胞の脱落ならびに内網状層厚の減?により示されるように網膜内層に傷害が限局する。従って、網膜内層に存在する神経細胞が血管細胞にとっての成長因子・栄養因子の産生・遊離を介して血管構造を維持している可能性が考えられた。本研究において、視神経節細胞が血管内皮成長因子であるVEGFを発現していることが明らかになった。視神経節細胞の脱落は、血管の機能と構造を維持するために十分な量のVEGFを供給できなくなるのかもしれない。このように網膜神経傷害は、網膜神経への血液供給の低下をもたらし更なる網膜神経傷害の悪化の原因になり得ることが示された。血管の構造と機能の維持は、緑内障、糖尿病網膜症、網膜虚血などの網膜疾患を防ぐ新たな治療戦略になり得るであろう。
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