研究概要 |
脳組織の恒常性維持や中枢高次機能は血液を運搬している脳血管機能に依存しているともいえる.しかし,脳梗塞後の脳血管を標的とした研究は少ない.脳梗塞後の脳血管病変発現の重要な要因として酸化ストレスが挙げられる.そこで,活性酸素発生源としてNADPH oxidaseに着目し,脳梗塞モデルラットから単離した脳毛細血管でのNADPH oxidaseサブユニットの量的変化をはじめに検討した. 脳毛細血管はFicollとdextranを用いた遠心分離法で単離し,NADPH oxidaseサブユニットの含量はWestern blotting法で検討した.その結果,脳毛細血管におけるNADPH oxidaseサブユニットp67phox量は中大脳動脈閉塞再灌流後1時間目から増加傾向を示し,再灌流6時間目からコントロール群と比較し顕著に増加した.この増加は少なくとも再灌流24時間目まで持続していた.チロシンキナーゼ阻害薬PP2を脳梗塞後に静脈内投与すると,この再灌流24時間目のNADPH oxidaseサブユニットp67phox量の著しい増加は軽減された. PP2投与による血液脳関門破綻抑制効果や梗塞巣拡大抑制効果等,前年度までの結果を考え合わせると,脳虚血再灌流後の脳毛細血管におけるチロシンキナーゼを介したNADPH oxidaseの活性化とそれに基づく活性酸素発生が脳梗塞病態形成課程での一つの重要な要因であることが示唆された.
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