研究概要 |
新規内因性ポリペプチドSLURP (secreted mammalian Ly-6/urokinase-type plasminogen activator receptor (uPAR)-related protein)-1は,ニコチン性アセチルコリン(ACh)受容体(nAChR)α7サブユニットのアロステリック・リガンドとして働いている.本研究では, SLURP-1の肺組織における発現を免疫組織学的に検討した. 独自に作製,あるいは市販の特異抗体を用いて,(1)C57BL/6Jマウスの肺におけるSLURP-1,コリン作動性神経マーカーCHT1,マクロファージ(MΦs)マーカーF4/80,神経マーカーPGP9.5および粘液分泌細胞マーカーmucin5ACの発現を検討した.(2)Westernblotにより,肺と気道におけるSLURP-1発現を検討した. (1)気管支線毛上皮細胞にSLURP-1の特異的発現を発見した.(2)Western blotの結果から,肺と気道におけるSLURP-1発現を確認した.(3)気管支の線毛上皮細胞と固有層PGP9.5陽性神経にCHT1発現を確認した.(4)線毛上皮細胞とコリン作動性神経の近傍にF4/80陽性MΦsの浸潤を観察した. 線毛上皮細胞は,ACh産生能をもち,α7nAChRを発現している.さらにSLURP-1が発現していた.これらの結果から,線毛上皮細胞が産生したAChとSLURP-1は,(1)自身のα7nAChRに,オートクライン的に働いてホメオステーシス維持に関与し,(2)線毛上皮細胞および固有層コリン作動性神経の近傍では, MΦsのα7nAChRに働いて, TNF-α遊離の調節に関与している可能性が考えられる.
|