研究概要 |
α7nAChRの新規内因性ペプチド性アロステリック・リガンドであるSLURP-1発現が,喘息モデル・マウスの気管支では低下している.また最近SLURP-1がT細胞の活性化に必須であることが報告された.これらの知見から,血中SLURP-1濃度の測定は,免疫が関与する喘息などの病態生理の理解や治療の評価に役立つ可能性が考えられる.本研究では,1)SLURP-1のELISAを開発するために,2種の抗体作製を試みた.さらに2)T細胞のコリン作動系活性に及ぼすSLURP-1の作用を調べた.1)抗ヒトSLURP-1抗体の作製においては,(1)SLURP-1分子上の異なる2部位を含む環状および直鎖フラグメントを合成し,KLHに結合させて2種の抗原を作製した.(2)これらの抗原を家兎とモルモットに免疫して抗血清を採取した.(3)抗血清とSLURP-1抗原を用いて,(1)抗環状SLURP-1フラグメント抗体の産生を家兎およびモルモットにおいて,(2)抗直鎖SLURP-1フラグメント抗体の産生を家兎においてのみ確認した.2)遺伝子組み換えSLURP-1(rSLURP-1)のヒトT細胞系白血病細胞株MOLT-3における細胞増殖とコリン作動系活性に及ぼす作用を調べた.(1)細胞増殖:rSLURP-1は,PHAの非存在下および存在下で,細胞増殖を有意に抑制した.(2)ACh含量と遊離量:rSLURP-1は,(1)PHA非存在下でACh遊離量の上昇傾向を,(2)PHA存在下でACh含量の上昇傾向を示した.以上の結果より,1)ヒトSLURP-1分子上のそれぞれ異なる部位を認識する2種の抗体作製に成功した.これらの抗体を用いて,SLURP-1のELISAを開発するための準備が整った.2)SLURP-1は,T細胞の分化を促進し,コリン作動系を促進させる可能性が明らかになった.
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