研究概要 |
代表者らは,M_1/M_5ムスカリン受容体(mAChR)あるいはα7型ニコチン受容体(nAChR)が,リンパ球機能を調節する可能性を報告している.生活習慣病において血管系の機能障害が起こっている.血液・血管系における主なアセチルコリン(ACh)産生細胞は,Tリンパ球である.そこで,肥満モデル動物におけるリンパ球コリン作動系活性とAChのリンパ球機能への影響を検討した. 肥満モデル動物として雄性ob/obマウス(12, 20週齢)を用いた.脾臓より単核白血球(MNL)を調製した.T細胞活性化薬コンカナバリンA (ConA, 3 μg/ml)の存在下,24時間MNLを培養した.一部は,mAChR作用薬オキソトレモリン-M (Oxo-M, 100μM)で1時間刺激した. RT-PCR法によりコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT), M_5mAChR, α7-nAChR,インターロイキン-2 (IL-2)遺伝子発現を解析した. ChAT遺伝子発現は,対照マウスと比較してob/obマウスにおいて有意に低下していた.ConAによるChAT遺伝子発現の増強の程度は,ob/obマウスにおいて弱かった.ob/obマウスでは,ChAT遺伝子発現は20週齢において12週齢と比較して増大していた.M_5 mAChRおよびα7-nAChR遺伝子発現には両群間で差はなかった.12週齢において,ConAによるIL-2遺伝子発現の誘導が,Oxo-Mにより増強されたが,この増強作用には両群間で差はなかった. 肥満モデル動物において,MNLにおけるACh産生が増大していることが明らかとなった.すなわち,リンパ球コリン作動系活性が生活習慣病により影響を受けている可能性が考えられた.肥満モデル動物におけるスタチン系薬のリンパ球系コリン作動系活性への影響について解析を進める予定である.
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