研究課題/領域番号 |
20590097
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
関口 富美子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90271410)
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研究分担者 |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 教授 (20177728)
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キーワード | 受容体発現 / 感染症 / 細胞・組織 / 細菌 / 癌 / Proteinase-activated receptor / ヘリコバクター・ピロリ / 炎症 |
研究概要 |
同意書を得られた胃癌患者10名より提供された胃粘膜組織の正常部位および癌部位についてヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)のマーカーであるウレアーゼAおよびウレアーゼBのタンパクレベルと、proteinase-activated receptor-1 (PAR1)およびPAR2のタンパクおよびmRNA発現レベルの相関について検討したところ、癌部位においてPAR1タンパク発現量とウレアーゼAおよびBの間に正の相関が見られた。一方、PAR2の発現レベルとウレアーゼタンパクレベルの間には相関は認められなかった。これらの結果は、胃粘膜において癌の発生あるいは進行にH. pylori感染とPAR1発現が大きく関与している可能性を示唆している。今後はさらに例数を増やし、癌の悪性度や転移性などにより分類したデータ解析を行う。細胞を用いた実験では、H. pylori抽出液中にPAR活性化プロテアーゼが含まれているかを検討するため、PAR1あるいはPAR2を内因性に高発現している上皮細胞を用いてその反応を観察した。その結果、PAR2高発現細胞株であるA549細胞およびHCT-15細胞において、PAR2刺激と同程度のPGE_2およびIL-8の産生亢進が認められた。しかし、A549細胞で見られたPGE_2産生亢進は、H. pylori抽出液を煮沸処理しても減少しなかったことから、プロテアーゼおよびPARの関与はないことが示唆された。一方、HCT-15細胞におけるIL-8産生亢進はH. pylori抽出液の煮沸処理により有意に抑制されたことから酵素活性の関与が示唆され、PARを介した反応が一部関与している可能性が示唆された。今後は、プロテアーゼの関与を検討するためプロテアーゼ阻害薬のメシル酸ナファモスタットの影響を観察し、さらにsiRNAによるPAR発現のノックダウンの効果についても検討を加える予定である。
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