研究課題
活性酸素種によるDNA障害の修復におけるヌクレオシド輸送体とDNA修復酵素の意義を明らかにする目的で、それらの活性化機構と遅発性細胞死との関連性を検討した。これまでにラット培養アストロサイトは神経細胞とは異なり、活性酸素種によりヌクレオシド輸送体の活性化を引き起こし、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害薬であるHydroxyureaによる影響を全く受けないことから細胞増殖以外の目的で活性化されていることを明らかにしていた。ヌクレオシド輸送体には細胞外液のNa_+に依存するConcentrative Nucleoside Transporter(CNT)と平衡型のEquilibrative Nucleoside Transporter(ENT)が知られているが、今回RT-PCRによりCNT1は存在せず、CNT2、 CNT3、 ENT1、 ENT2が発現していることを明らかにした。活性酸素種によるヌクレオシド輸送体の関与を過酸化水素(H_2O_2)によるチミジンの取り込みで評価したところ、膜輸送能は減少するものの酸不溶性画分への取り込みは促進された。また、細胞外液Na_+の除去、及び、ENT阻害薬であるNBMPR、 Dipyridamole、 Dilazepにより濃度依存的に抑制され、さらに、細胞外液Na_+の除去時において、ENT1を阻害する100nM NBMPRではなく、ENT2を阻害する1mM Dipyridamoleによる阻害効果が確認された。チミジンはCNT2からの取り込み感受性が低いことが知られており、H_2O_2によるチミジン取り込みは主にENT2とCNT3を介することが明らかできた。H_2O_2による遅発性細胞死に対するCNT、 ENTの関与を細胞生存性を検討したところ、それら輸送体活性を抑制することにより遅発性細胞死は促進された。DNA修復酵素としてはポリメラーゼβ(polβ)が知られているが、RT-PCRによりラット培養アストロサイトに存在することを確認した。そして、polβ阻害薬であるd_2TTPによりH_2O_2によるチミジン取り込みは濃度依存的に抑制され、遅発性細胞死は促進された。以上より、活性酸素種によるヌクレオシド輸送体を介するチミジン取り込みの促進は、DNA修復酵素の活性と関連し、遅発性細胞死に影響を与える可能性が示唆された。
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Journal of Pharmacological Science
巻: 115 Suppliment 1 ページ: 134-134
Bulletin of the Japanese Society for Neurochemistry
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http://www.huhs.ac.jp/images/pdf/yakugakubu/tanakakouichi.pdf