【既存データベースの検証と新規データベースの構築】国内外の臨床試験の情報を完全に網羅するデータベースは存在しないため、複数のデータソース(医薬品医療機器総合機構、clinicaltrials.gov、JAPIC、UMIN等)より情報を収集した。各種データベースから入手可能な日本における臨床試験数は厚労省への治験届出数よりも少なく、日本実施の臨床試験の全てを補足することは困難であることが判明したが、適切な条件設定のもとでデータ抽出を行うごとで個別の分析目的には対応可能と判断した。 【日米欧における臨床試験】世界売上10社および内資企業4社による2008年9月時点での臨床開発状況を目米欧で比較した。米国で臨床開発中の品目が日本で開発着手される割合は、目本企業は米国企業や欧州企業に比べて多かった。欧州でも同様の現象、すなわち自地域主義が見られた。 【臨床開発着手時期の国別相違】医薬品開発が海外先行型であるために日本での医薬品開発着手が遅くなるという企業行動を、新薬の成功確率の観点から検討した。1995年から2003年の間に、日本およびアメリカでPhase2を実施した品目を抽出し、日米の医薬品開発の成功確率(Phase2から承認に至る確率と定義)を算出した。成功確率は日本より米国の方が低かった(それぞれ21%、16%)。さらに、自国のPhase2開始時が、世界の他地域のphase2開始年より早い・同じ・遅い場合の3群で層別すると、遅いほど成功確率が高くなる傾向が見られた。日本における医薬品開発が海外先行型であるのは、成功確率が高まるという点で企業にとって合理的な選択の結果である可能性が示唆された。ドラッグラグが社会問題化している中、実効性のある対策にはこのような企業行動の特徴を織り込む必要があることが示唆された。
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