研究課題
申請者は、2価のパラジウム錯体が、アリルアルコールへのヘテロ付加環化反応を極めて有効に触媒し、緩和な条件で立体選択的にヘテロ環が生成する事を見出し、この反応を鍵反応として、以下に示すように、ヘテロ脂環式生物活性天然有機化合物の立体選択的な合成を行なった。(1)マイコバクテリアに対する生物活性を示す(+)-dienomycineの全合成を行い、その絶対配置を明らかにした。(2)陸奥湾産のホタテガイPatinopecteny yessoensisの中腸腺から単離された海産毒yessotoxinのトランス縮環ポリテトラヒドロピラン構造部の合成を、2価のパラジウム触媒による立体選択的なヘテロ付加環化反応を反復使用することにより達成した。(3)ヘミアセタールをヘテロ付加環化反応の求核種とすることで、D-riboseやD-deoxyriboeの合成を行ない、種々の五単糖や六単糖の合成への新しいルートを確立した。また、同様の手法を用いて、薬理活性が期待できるスピロC-アリールグリコリボシド誘導体の合成も行なった。(4)ヘミアセタール中間体を経由するヘテロ付加環化反応をカスケード型の反応に応用し、スピロケタール環の立体選択的な合成に成功した。現在、スピロケタール環を有するspirofungin等のポリケチド類の合成を行なっている。(5)spirofungin類の合成を行なうにあたって、共役ジエンの立体選択的な合成法の開発が必要となり検討した結果、パラジウム触媒とトリメチルアルミを用いるカップリング反応が極めて有効である事を見いだした。特に、著者らの開発したヘミアセタール中間体を経由するカスケード型のヘテロ付加環化反応は、糖類やスピロケタール環を有する天然物の合成に極めて有用な手段を提供するものと考えられ、さらなる展開が期待される。
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