研究概要 |
本研究は,細胞増殖機能調節に関わっている酵素のチロシンキナーゼ(PTK)を阻害して,腫瘍細胞増殖を阻害する新規抗腫瘍薬開発を目的に行った研究である。特に,デアザフラビン類縁化合物に関して,抗腫瘍活性データとコンピューターを駆使した酵素へのドッキングデータよりバーチャルスクリーニング系の構築を行い,この系より得られた活性情報を基にデザインした新たな活性有効化合物のみを合成し,その合成化合物の癌細胞への阻害活性試験を行うものであり,バーチャルスクリーニング系を抗腫瘍薬開発に取り入れた新規高効率抗腫瘍薬開発研究である。 本年度は下記の研究成果を得た。1、前年度スクリーニングで評価した化合物のそれぞれの評価系での構造活性相関を精査した結果、合成したデアザフラビン-テストステロン及びデアザフラビン-アンドロスタノロン融合化合物の多くにCCRF-HSB-2(ヒト急性リンパ芽球性白血病細胞)とKB細胞(口腔癌由来細胞)に対して2~10μg/mlの抗腫瘍活性を見出せた。一方、これらの抗ウィルス(単純ヘルペスウィルス)活性は殆ど見出せなかった。2、抗腫瘍活性が期待される新規骨格として,5-デアザフラビンの9位アザ化合物、即ち9-アザ-5-デアザフラビン骨格を有する化合物の合成法に成功し,種々の誘導体を合成した。これらにも2μg/mlの強い抗腫瘍活性化合物を見出すことが出来た。3、コンピューター生物活性支援ソフト(Discovery Studio)を用い,5-デアザフラビン類縁化合物類のPTK(pp60c-src)に対する阻害作用(結合自由エネルギー)を求め、抗腫瘍活性試験結果との相関を求めた。4、化合物の抗腫瘍活性データと酵素へのドッキングデータ(結合自由エネルギー)との相関関係より、結合自由エネルギーが小さい程抗腫瘍活性が強いことが判明し、バーチャルスクリーニング系の構築を大凡完成させた。
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