研究課題
近年、動脈硬化症の指標として注目が集まっている小粒子LDLのアディポサイトカイン産生への影響を3T3-L1脂肪細胞を用いて調べた。なお小粒子LDLとして、ヒト血漿より調製したLDL粒子を分泌型ホスホリパーゼA_2で処理した標品(sPLA_2-LDL)を用いた。その結果、酸化LDL同様、メタボリックシンドロームへの関与が指摘されるplasminogen activator inhibitor 1 (PAI-1)、monocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1)の著明な発現増大が観察された。また、これらの発現増大シグナルを解析した結果、活性酸素種(ROS)産生系およびMAPキナーゼシグナルの関与が示唆された。その結果を以下に記す。1. sPLA2-LDLのアディポサイトカイン産生への影響3T3-L1脂肪細胞(分化後10日目)に10~100μg/mLのsPLA_2-LDLを処理し、PAI-1およびMCP-1の培地中への分泌をウェスタンブロット法およびELISAで測定した。その結果、濃度および時間依存的に両分子の分泌量が増大した。2. ROSとMAPキナーゼシグナルの関与sPLA_2-LDLで誘導されるPAI-1とMCP-1の分泌増大に関わるシグナル経路について各種阻害剤を用いて検討した。両分子ともにROS-ERKシグナルに依存したmRNA転写活性化を介していることが明らかとなった。また、PAI-1ではその活性発現にp38MAPキナーゼも50%寄与していることがわかった。本年度の研究により、sPLA_2-LDLは血管内皮細胞のみならず、脂肪細胞のアディポサイトカイン産生をも変化しうることが初めて明らかとなった。よって、sPLA_2によるLDLの加水分解がメタボリック症候群に関与する可能性がある。今後は、脂肪組織内で発現するsPLA_2のアイソザイムの同定を行い、in vivoにおいてもこのような生体反応が起こりうるのか確認する予定である。
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