研究課題
酸化ストレス産物である変性修飾LDLとアディポサイトカイン産生異常の関連性を検証することを目的とし、脂肪細胞における1)レジスチン翻訳制御機構の分子機序解析、2)ボスフォリパーゼA_2修飾LDL(PLA_2-LDL)によるmonocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1)産生変化について調べ、次の結果を得た。1.レジスチン翻訳活性化機構の解析3T3-L1脂肪細胞からレジスチン分泌を亢進させる酸化LDL中の脂質同定と、翻訳活性化に関わるシグナル伝達に関する検討を行った。クロロホルム抽出液からC18逆相HPLCで活性画分を分離して構造解析を試みたが、含有量が極端に低いためか活性成分は特定できなかった。一方、レジスチン翻訳活性化に関わるシグナルとして、活性酸素種ROSの産生とMAPキナーゼERK活性化の両方が必要であることを明らかにした。ROS消去剤、ERK阻害剤の何れか一方でレジスチン翻訳促進は完全に抑制された。よって、2つのシグナルの同時活性化が必要と考えられる。2.PLA_2-LDLによるアディポサイトカイン産生の分子機序PLA_2-LDLで誘導される脂肪細胞からのMCP-1分泌は、ROS産生とERK活性化、およびp38 MAPキナーゼの2つのシグナル経路を介していることを明らかにし、それぞれ独立した経路であることがわかった。この誘導剤また、PLA_2-LDLの細胞内取込み経路をリガンド結合実験で調べた結果、酸化LDLと異なる受容体分子を介していることがわかった。以上の結果より、酸化変性LDLによるレジスチンとMCP-1産生増大は、その取込み機序、分子機序は異なるもののROS産生とBRKシグナルを介する点は同一であった。したがって、酸化変性修飾LDLによるアディポサイトカイン産生異常は、これらの阻害剤により解消できることが示唆された。
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