研究概要 |
活性型ビタミンDである1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D3)はカルシウム代謝を調節するホルモンであるが、それ以外に細胞の分化誘導や増殖抑制、免疫調節など多彩な生理作用を持っことが知られている。そのため、1,25D3やその誘導体は骨疾患に加えてガンや免疫疾患の治療薬として期待されている。しかし、ガンや免疫疾患に有効な量では高カルシウム血症を併発することから、作用分離された誘導体の開発が望まれている。1,25D3は、核内受容体の一員であるビタミンD受容体(VDR)に結合し遺伝子転写を介して上記作用を発現する。したがって作用分離した誘導体を論理的に創製するためにはVDRへの結合様式と共にVDRのアロステリック効果がどの様に伝わっていくのか明らかにすることが重要となる。今回、申請者は、VDRとの疎水性相互作用が十分でない22-ブチルー25,26,27-トリノル活性型ビタミンD誘導体がアンタゴニスト作用を示すのではないかと考え、8種の関連化合物のVDRアゴニスト作用並びにアンタゴニスト作用を遺伝子転写活性、HL-60細胞の分化誘導、CYP24A1発現のリアルタイムPCRにて評価した。その結果、22S-ブチルー25,26,27-トリノル活性型ビタミンD誘導体が比較的強いアンタゴニスト作用を示すことを見出した。この結果から、アゴニスト、アンタゴニスト、選択的作用を持つリガンドの論理的創製の可能性を示すことができた。今後これらリガンドを用いてアロステリックネットワークにどのように寄与しているのか明らかにする予定である。
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