研究概要 |
昨年度、22位にブチル基を持つ活性型ビタミンD誘導体(22-Bu体)がビタミンD受容体(VDR)アンタゴニストとして作用することを報告した。そこで、この新しいタイプのアンタゴニストである22-Bu体の構造活性相関を明らかにし、作用発現機構を構造生物学的に解明するために、22位にアルキル基をもつ種々の活性型ビタミンD誘導体をデザイン・合成し、活性を評価した。ビタミンDの共役トリエン構造は酸や光や酸素に不安定である。近年10,19-メチレンを2位に移した2-メチレン-19-ノル構造が、共役トリエン構造を代替できることが報告された。そこでA環が2-メチレン-19-ノル構造で、22位にブチル基、エチル基あるいは水素(無置換)を持ち、側鎖末端には水素、メチル基あるいはエチル基を持つ化合物をデザインした。合成は、キナ酸より誘導したA環部とビタミンD2より誘導したグランドマンケトンをカップリングさせた後、側鎖部を修飾する方法で行った。現在までに15種の化合物を合成した。これら化合物のヒトVDRへの結合親和性を[3H]-1,25-(OH)2D3との競合的結合実験により評価した。その結果、いずれの化合物も1,25-(OH)2D3の0.03~数倍のVDR親和性を示し、VDRのリガンドであることが明らかになった。また、遺伝子転写活性を検討した結果、興味深い構造活性相関が明らかになった。今後、特徴的な作用スペクトルを示す化合物とVDR-LBDの相互作用解析を行う予定である。また、PPARγのリガンドとして新規脂肪酸誘導体を設計し、合成した。それら化合物とPPARγ複合体の結晶構造解析を検討中である。
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