研究概要 |
(1)細胞のDNA代謝にかかわる酵素トポイソメラーゼ(以下、トポ)は、増殖の激しいがん細胞に多く存在するため、トポ阻害薬は抗がん薬として利用されている。以前、我々が放線菌の培養液から単離したイソオーロスタチンは、カンプトテシンやエトポシド等のトポ阻害薬と異なり、DNA鎖に障害を与えない新しいタイプのトポ阻害薬であった。さらに、水酸基をイソオーロスタチンに付加することで、トポ阻害活性が増強することが明らかになった。そこで、水酸基を多く含むガロイール基をイソオーロスタチンに付加した3種の誘導体(1~3-TGBA)を合成し、そのトポ阻害活性および阻害様式について検討した。 (2)トポ阻害活性、複合体形成及び阻害様式の検討は、誘導体と基質pBR322プラスミド及びトポを加えて37℃で30分間酵素反応した後、アガロース電気泳動を行い、DNAのRelaxation量を画像解析ソフト(CS Analyzer 3、ATTO社)を用いて測定した。 (3)ガロイール基を付加した3種の新規な誘導体(1~3)は、強いトポI及びII阻害活性を示した。また、これらの誘導体はイソオーロスタチンと同様にトポI及びIIと切断複合体を形成することなく、阻害様式は非拮抗的で、従来のカンプトテシンやエトポシドとは異なる阻害作用と考えられた。 [chemical formula] 1 : 1, 2, 3-TGBA 2 : 1, 2, 4-TGBA 3 : 1, 3, 5-TGBA
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