(1) PHF形成阻害分子シアニジン、フェノチアジンとタウMBDドメイン構造との相互作用解析 各種食品成分のタウ蛋白質PHF形成阻害能をThS蛍光法および動的光散乱法で検索した結果、赤ワイン成分中のポリフェノールのシアニジンおよび関連の芳香族化合物であるフェノチアジンに顕著な抑制能を有することを明らかにした。ついで、これら化合物の構造活性相関より、芳香族性の平面構造が抑制発現に重要であること、それは、タウMBDの重合に伴う分子コンフォメーション変化の抑制に起因すること、それはタウMBDの第3番目の繰り返し構造に存在するタイロシン残基と阻害分子との相互作用によることを明らかにした。 (2) MBDのR2、R3あるいはR2-R3リピート構造を認識する抗体の設計 (1) の結果からも示唆されるように、MBD繰り返し構造の特定部位を認識する抗体はタウ蛋白質PHF形成抑制が期待できる。そこで、4回繰り返し構造全般あるいは部分的に認識する抗体の作成を試みたところ、2番目の繰り返し構造(R2)を認識する抗体の作成に成功した。その抗体はタウ蛋白質PHF形成阻害能を完全に抑制すること、それはMBD構造を安定化させ、重合に伴うコンフォメーション変化を起こさせないことに依っていることを明らかにした。ついで、その抗体(可変領域)とR2-R3リピート構造との複合体の結晶化に成功した。現在その構造をX-線により解析中である。
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