研究概要 |
(1)MBDのR2-R3リピート構造を認識する抗体の作成とその認識機構の解明 4回繰り返し構造全般あるいは部分的に認識する抗体の作成を試み、2番目の繰り返し構造(R2)を認識する抗体の作成に成功した。その抗体はタウ蛋白質PHF形成阻害能を完全に抑制すること、それはMBD構造を安定化させ、重合に伴うコンフォメーション変化を起こさせないことに依っていることを明らかにした。ついで、その抗体(可変領域)とR2-R3リピート構造との複合体の結晶化に成功した。空間群はC2,格子定数はa=177.95, b=70.42, c=41.75Å, β=93.92°で、分解能が2.3Åまでの22809の独立な反射データを収集した。分子置換法で立体構造を決定し、現在、信頼度因子が0.445までに構造の精密化を進めている。 (2)PHF形成阻害分子チオニンとタウMBDドメインとの相互作用解析 阻害分子チオニンがタウMBDドメインのどの領域に強く結合するかを明らかにするため、R1~R4の各位繰り返し目領域のフラグメントを用い、NMP法により、相互作用様式を解析した。その結果、R3領域のN末端6残基、とくに310番目のチロシン残基とのスタッキング結合の形成が示唆された。現在、より強固な結合を示す化合物を検索している。 (3)R3ドメイン内チロシン残基を選択特異的に就職する化合物の開発 上記(2)の研究から、阻害剤が強固に結合するためには、R3のN末端領域がβ-ストランド構造を取ること、その構造形成には308番目のIle残期と310番目のTyr残基間との間でC-H…π結合の形成が重要であることを明らかにした。この知見はより効果的な阻害分子の設計に重要な知見であり、現在それに基づいた設計を試みている。
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