研究課題
平均寿命が世界一となり、急速な高齢社会を迎えている我国では、がん、骨疾患、神経疾患、心疾患、アレルギー疾患などの加齢性疾患の罹患数が急増している。中でも、21世紀における主要疾患の一つに脳疾患があげられ、益々複雑化するストレス社会と相俟って脳機能障害の原因究明と治療効果の向上が急務になっている。特にアルツハイマー病をはじめとする脳神経変性疾患は、統合記憶システムとして生物の生命活動に必須である神経系の破綻を引き起こし、身体能力すべてに甚大な影響を与えるため、その発症を予防・治療する方法が切望されている。一方、最近になって、脂溶性ビタミンであるビタミンA、D、E、Kも高濃度に存在し、これらの特異的受容体も脳組織全域で発現していることが明らかにされた。したがって、このような脂溶性リガンドは、神経機能の維持に重要な役割を果たしている可能性が高いと考えられる。そこで我々は、脂溶性リガンドから脳神経変性疾患治療薬を創製する目的で、コンビナトリアルケミストリーの手法を応用し、ハイスループットスクリーニングにより、脳神経変性疾患治療薬の候補となる化合物を探索していく研究を発案した。申請者らはまず化合物ライブラリーを得るために、脂溶性ビタミンの基本構造であるアルキル側鎖部分と環部分に分けて分子構造を検討し、それぞれを修飾した誘導体を組み合わせて合成を行った。このようにして得られた化合物は、当研究室で確立されているHigh-Throughput Screeningアッセイにかけて神経細胞に対する突起伸長促進作用などの生理活性を評価している。これらの結果から、細胞レベルで脳神経に作用する化合物を抽出してリード化合物を見出す予定である。
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