研究概要 |
新規有機合成反応の開発をベースに、官能基特異的な化合物ライブラリーの構築を目指し、活性型カルボニル化合物(トリフルオロメチルケトン、クロロジフルオロメチルケトン)の合成法の確立とそれらの薬理活性物質探索研究を行った。 (1)アミノ酸のDakin-West反応を利用して、トリフルオロメチルケトンあるいはクロロジフルオロケトンへの変換反応を目的として、N-チオアシル-α-アミノ酸と無水トリフルオロ酢酸との反応を検討した。プロリンから誘導されたN-チオアシルプロリンをピリジン存在下、無水トリフルオロ酢酸と反応させると、目的のトリフルオロメチルケトン体ではなく、5-trifluoromethylthiazole類が高収率で得られた。しかし、N-benzyl-N-thioacylphenylalanineでは、10%前後の低収率であった。本反応は、N-チオアシル-α-アミノ酸が脱水閉環したメソイオン中間体を経由して進行していると考えられる。なお、本反応はトリフルオロメチル基が導入されたチアゾール類の合成法として有用である(萩本、河瀬:口頭発表)。 (2)N-アシルテトラヒドロイソキノリン-1-カルボン酸と無水トリフルオロ酢酸の反応から得られた1-trifluoroacetyl-1,2,3,4-terahydroisoquinoline類と1位にエステル基、カルボキシル基、ケトン基を有するテトラヒドロイソキノリン類および関連化合物36個の化合物ライブラリーを構築し、ヒト口腔扁平上皮癌細胞とヒト口腔正常細胞に対する50%細胞障害濃度(CC50)を求めた。正常細胞に対するCC50値を癌細胞に対するCC50値で割り、腫瘍選択係数を求めたところ、腫瘍選択性の高い細胞毒性化合物を見出した。これらの化合物は、DNAの断片化やカスパーゼの活性化などのアポトーシスマーカーをほとんど誘導しなかったが、アクリジン陽性の酸性オルガネラの形成などのオートファジーマーカーを誘導することを見出しだ(井出尾ら、論文受理)。
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