核内受容体LXR(liver X receptor)はコレステロール輸送・異化に関わる遺伝子発現を制御し、アゴニストは抗動脈硬化性リポタンパクHDL上昇薬の有力候補である。しかしながらlipogenesis促進によるトリグリセリド上昇を招くことから、細胞組織選択的あるいは遺伝子選択的に機能を発揮するリガンドの開発が期待されている。私達はLXR/RXRを選択的に活性化し細胞選択性を発揮するリガンド(モジュレーター)を複数同定しており、本研究では選択性を発揮するメカニズムの解明を行う。今年度は以下の知見を得た。 (1)Riccardin C(RC)はLXRαアゴニスト/LXRβアンタゴニストのユニークな特性を示す。RCがLXRαを選択的に活性化する機構について、LXRαとLXRβのキメラ受容体を調製し検討した。LXRαのヘリックス3-7をLXRβに置換するとRCの活性が消失し、逆にLXRβの同領域をLXRαに置換すると活性が復活し、この領域にRCによる活性化に必要な構造要因が存在することが判明した。 (2)RXRアゴニストHX630とPA024はLXR/RXR活性化の能力が異なり、RAW264細胞においてLXR標的のABCA1発現およびHDL産生促進活性に違いを示すことを見いだした。HX630はヘテロダイマー選択性を示しPPARγ/RXRの転写を活性化するがLXR/RXRは活性化できなかったが、PPARγ-LXR-ABCA1経路を活性化する能力を有し、PPARγ発現細胞ではLXRα発現促進を介してABCA1プロモーターを活性化した。したがってHX630の細胞選択的機能はPPARγの発現量に依存する可能件がある。
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