研究概要 |
真菌のモデル生物である出芽酵母を用いて、汎用消毒剤である逆性石けん(塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン)に対する耐性機構を解析した。これまでに本研究代表者は、トランスポーターのひとつSge1を過剰発現させた場合に、酵母が逆性石けんに耐性を示すことを明らかにしている。本年度は、まずSge1に構造上近い3個のタンパク質Azr1,Vba3,Vba5が、Sge1同様に酵母の逆性石けん耐性に関与しているかどうかを調べた。ちなみに、Azr1はアゾール系の抗真菌薬に対する耐性を変化させる因子であり、逆性石けん耐性との関連が興味深い。その結果、これらいずれのタンパク質を過剰発現させた場合にも、酵母の逆性石けん耐性度は野生株と同程度であった。したがって、Sge1類似分子のうち逆性石けん耐性に関与し,おそらく逆性石けんの排出を行うのは、Sge1のみであると考えられる。また、Sge1およびその類似分子の遺伝子欠損株についても、逆性石けん耐性に及ぼす影響を調べた。その結果、Sge1,Azr1,Vba3,Vba5について、いずれの遺伝子欠損株も逆性石けん感受性が野生株よりも高くなることは無かった。この結果から、逆性石けん排出に関与する因子がSge1以外にも存在し、Sge1遺伝子欠損株では、その因子がSgelの機能を補うため、逆性石けん耐性度が野生株と変わらないと考えられる。
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