ストレスにより誘導されるグルココルチコイド(GC)の上昇は、精巣において、精子形成に関与するテストステロン(Tes)産生を抑制することが知られている。しかし、精巣にはそのGC誘導Tes産生抑制を阻止する為にGCの不活性化機構(cortisolのcortisoneへの変換)の存在が考えられており、著者らは、ヒトに近縁のブタ由来の精巣ライディッヒ細胞を用い、11β-HSDサブタイプであるtype1とtype2がそれぞれcortisolをcortisoneに変換することを見いだしてきた。この過程で、既存のブタ11β一HSDType1を新たにクローニングした結果、塩基およびタンパク質レベルで、それぞれ15お1よび8カ所の相違があるクローンが得られ、その配列分析および酵素化学的性質から、既に他の研究者から報告されているtype1の塩基配列に誤りのある可能性を明らかにした。次にヒト精巣において、これら11β一HSDサブタイプであるtype1とtype2が存在しているか否かを検討する目的でreal-time RT-PCR法を構築して、それらのサブタイプおよびGC受容体の定量を行い、他の23種の組織におけるそれらの発現とも比較した。その結果ヒトの精巣においても、11β-HSD Type1のみならずType2も発現しており、これら2種のサブタイプがCortisolを不活性化(酸化)することにより、GC誘導Tes産生抑制を阻止している可能性を示唆した。
|