研究概要 |
1) 発現系及びヒト肝臓ミクロソーム(HLMs)のCYP2D6に対する阻害作用は、主要カンナビノイドの中でカンナビジオール(CBD)が最も強かった(Ki値=1.11~2.23μM)。また、CBDの阻害様式は競合型であった。2) CBDはCYP2D6の活性を代謝依存的に阻害した。3) CYP2D6の阻害剤としては、キニジンに代表される含窒素塩基性化合物が知られているが、CBDの阻害作用は、これまで阻害作用の報告がある窒素非含有化合物(プロゲステロンなど)よりも強力であった。4) CBDのCYP2D6阻害作用には、オリベトールの部分構造が重要であることを明らかにした。5) CBDはCYPIAlを代謝依存的に阻害することが明らかとなった(Kinact(/min>=0.215, Kinact/K_1(L/mmol/min)=490)。CBDによるCYPIAl阻害作用にはオリベトールの構造が重要であり、CBDはCYPIAlの活性中心において1箇所のスタッキング相互作用及び2箇所の水素結合を形成し、強力かつ選択的な阻害作用を示すことが、モデル実験から示唆された。6) 主要カンナビノイドは、代謝依存的なCYP2A6の阻害作用を示した。テトラヒドロカンナビノール(Δ^9-THC)及びカンアビノール(CBN)においてCBDよりも強い作用が認められた。7) 主要カンナビノイドの中でCBDに最も強いCYP2B6の阻害作用が認められた(Ki=0.694μM)。CBDのCYP2B6の阻害作用の様式は、非競合型(HLMs)または混合型(発現系)であった。以上の結果は、大麻成分と薬毒物との代謝的相互作用を考える上で重要な知見である。8) Δ^9-THCは15-lipoxygenaseの強力な阻害剤(IC_<50>=2.42μM)であることを明らかにした。また、主代謝物であるΔ^9-THC-11-oic acidにも阻害作用が認められた。9) 11-hydroxy-Δ^9-THC及び11-hydroxy-Δ^8-THCは、12-lipoxygenaseを選択的に阻害することを明らかにした。これらの結果は、THC及び代謝物がこれらlipoxygenaseの阻害作用により、脂質関連疾患の予防因子として働くことが示唆された。
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