研究課題
これまでに、セレノメチオニン(SeMet)の耐糖能改善効果には標的組織に対するinsulin様作用によることが示唆されたため、脂肪細胞と肝細胞を用いてinsulin様作用やその抵抗性改善作用について検討を行った。SeMetは、3T3-L1脂肪細胞に対してglucose取込みを促進するとともに、isoproterenol処理により促進されたFFAの産生を抑制した。また、SeMetはGPX1 mRNA発現量を増大させ、ROS産生を抑制したことから、この産生抑制を介してinsulin signal伝達系に関与し、insulin抵抗性を改善することが示唆された。Insulin receptor tyrosin kinaseリン酸化阻害により、SeMetのglucose取込み促進作用は抑制されず、phosphatidylinositol-3-kinase (PI3-K)触媒サブユニットp110部位の阻害により、この取込み促進作用が抑制された。また、SeMetはIRS tyrosin 612残基のリン酸化タンパク質の発現量を増加させた。そのため、SeMetはROS産生抑制によるIRSのリン酸化制御を介してPI3-Kを活性化し、glucose取込みを促進することが示唆された。つぎに、Hepa 1-6細胞にpalmitate処理してinsulin抵抗性が増大した条件を設定したところ、SeMetはFFAによるglycogen量の低下を正常レベルまで回復させることが判明した。また、SeMet処理によってHepa 1-6細胞内GPX1発現量が増大した。以上、SeMetは脂肪細胞および肝細胞に対するGPX1の賦活化による細胞内ROS産生の抑制を介したinsulin signal伝達系を促進させることによって、insulin抵抗性を改善することが示唆された。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Biomedical Research
巻: 33(1) ページ: 63-66
10.2220/biomedres.33.63