研究課題
基盤研究(C)
糖尿病発症に及ぼすセレン状態やセレン化合物投与の影響とその作用機序を解明することを目的として本研究を行った。亜セレン酸ナトリウム(Na_2SeO_3)は、2型糖尿病モデルNSYマウスに対して血糖低下と糖負荷後の血漿中insulin濃度を上昇させ耐糖能改善効果を示した。そこで、有効な耐糖能改善効果を示す候補化合物としてNa_2SeO_3、methylseleninic acidおよびseleno-L-methionine(SeMet)をnicotinamide/streptzotcin誘発性短期糖尿病マウスモデルを用いて検討したところ、SeMetが最も高い耐糖改善効果を有することが認められた。この効果は、膵臓におけるセレン含有量とglutathione peroxidase 1(GPX1)mRNA発現量の上昇、ROS産生抑制と、血漿中の遊離脂肪酸(FFA)およびHbA1C濃度の低下ならびにadiponectin濃度上昇によることが示唆された。この耐糖能改善作用機序を検討したところ、SeMetは、3T3-L1脂肪細胞に対して、GPX1発現量の増大に伴うROS産生抑制によるinsulin receptor substrateのリン酸化制御を介してphosphatidylinositol-3-kinaseを活性化し、glucose取込みを促進することが示された。また、Hepa 1-6細胞において、FEAとしてのpalmitate処理によりinsulin抵抗性が増大した状態における細胞内glycogen貯蔵に対するSeMetの影響について検討した結果、SeMetはFEAによるglycogen量の低下を正常レベルまで回復させることが判明した。また、SeMet処理によってHepa 1-6細胞内GPX1発現量が増大した。これらの結果から、SeMetは、脂肪細胞および肝細胞に対するGPX1の賦活化による細胞内ROS産生の抑制を介したinsulin signal伝達系を促進させることによって、insulin抵抗性を改善することが示唆された。
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Biomedical Research
巻: 33(1) ページ: 63-66
Journal of Health Science
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