研究課題/領域番号 |
20590131
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研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
黒川 昌彦 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (80186527)
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研究分担者 |
渡辺 渡 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (50399218)
吉田 裕樹 九州保健福祉大学, 薬学部, 助教 (90469411)
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キーワード | インフルエンザ / ウイルス感染症 / サイトカイン / 気道 |
研究概要 |
インフルエンザ感染初期気道内における単球/マクロファージからのIL-12産生が、感染にともなうサイトカインカスケードによる感染病態の進行や宿主防御反応の重要な起点と考えられる。そこで、IL-12産生の制御ができれば、感染病態を軽症化できる可能性が考えられる。このため、肺胞マクロファージからのIL-12の発現、産生機序をin vitroで解明することにより、IL-12産生制御が可能なシグナル伝達経路を明らかにすることを目的とした。そこで、平成21年度では、肺胞マクロファージにおけるIL-12産生機序を解析するため、インフルエンザウイルス感染マウスの肺洗浄液中の細胞から、肺胞マクロファージの分画を試みた、しかし、コントロールとなる非感染マウスからの肺胞マクロファージの分画量が十分ではなく、納得できる結果が得られなかった。このため、これまで明らかにしたマクロファージからのサイトカイン誘導を制御できる伝統医薬物(葛根湯)由来の7-hyoroxycoumarin(7-HC)を用いて、マウスでのインフルエンザウイルス感染初期におけるマクロファージからのサイトカイン誘導が、インフルエンザ病態と密接な関係にあることを証明した。すなわち、まず、マクロファージ様P388D1細胞を用いて、7-HCが炎症性サイトカイン(IL-1α、TNF-α、IL-6)の産生、誘導を抑制することを、ウエスタンブロットをもちいて明らかにした。さらに、インフルエンザウイルス感染マウスをもちいて、7-HCの経口投与がインフルエンザウイルス感染マウスの病態(体重減少や肺炎)を軽症化し、生存日数を延長することを確認した上で、7-HCが炎症性サイトカインやTh1サイトカイン(IL-12,IFN-γ)の肺胞内への誘導が感染初期に抑制されることを明らかにした。この結果、インフルエンザウイルス感染による病態が、感染初期のマクロファージ由来の炎症性サイトカインやその誘導に引き続いて起こるTh1サイトカインの誘導と密接な関係にあることを示した。したがって、これらの感染初期のサイトカイン誘導の制御により、インフルエンザ感染病態の緩和を期待できることを示唆した。また、7-HCがインフルエンザウイルス感染によるサイトカインの誘導を制御できる物質として、今後のインフルエンザに対する予防、治療薬としての可能性を示した。
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