研究概要 |
Rho kinase阻害薬のin vivoにおける効果について検討した。まず、Rho kinase阻害薬であるY-27632について検討した。Y-27632は通常の末梢投与によって神経組織に移行しないため、脊髄の大槽内にカニューレを設置して持続投与することを試みた。しかしながら、長期(4週間)の設置により髄膜炎が生じたため、大槽内へのカニューレ設置については断念した。そこで、末梢投与によって神経組織に移行するRho kinase阻害薬であるFasudilを用いて検討を行った。Fasudil(3mg/kg/dの皮下投与)は、メチル水銀中毒モデル動物(20ppmメチル水銀水の4週間飲水投与)における末梢神経(後根神経節,後根神経,脊髄交索路)の神経変性およびメチル水銀中毒に特有な症状である後肢交差を抑制した。以上の結果から、Rho/ROCK経路の抑制がメチル水銀による神経軸索の不均衡を制御し、軸索変性と細胞死を抑制することがin vitroだけではなくin vivoでも示された。 また、培養神経細胞を用いてメチル水銀以外の環境毒(無機水銀、鉛、Rotenone、アミロイドβ)についても軸索変性および神経細胞死作用についての実験を行った。その結果、無機水銀とRotenone(パーキンソン病の原因候補物質)が、メチル水銀と同様に神経細胞死に先行してRac1低下を伴う軸索変性を引き起こし、その作用はRho Kinase阻害薬によって抑制されることが明らかになった。
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