研究概要 |
胎盤におけるアミノ酸トランスポータの発現変動を明らかにするため、妊娠日齢の異なるラット胎盤を用いて評価した。その結果、System A(SNAT1, 2, 4)およびsystem y^+L(y^+LAT1, 4F2hc)は、妊娠の進行に伴い顕著に増加していることが明らかとなった。また、ASCT2(ATBO)は妊娠期全般を通して発現しており、他のトランスポータに比べ比較的緩やかに増加していた。system N(SNAT3, 5, 6)は胎盤における発現が不明とされてきた。今回、ラット胎盤においてそれらの発現を明らかにした。特に、SNAT3においてはmRNAレベル、蛋白質レベルともに妊娠初期から中期の胎盤に多く発現が認められた。さらに、その局在について検討を行った結果、細胞膜画分に発現していることを明らかにした。 ラット胎盤におけるグルタミン合成酵素(GS)のmRNAは、妊娠11日目に最大であった。また、GS活性についても妊娠初期から中期胎盤に高かった。さらに、GS活性とGSmRNAとの変動は良く一致していることが示された。妊娠初期胎盤においてGSが産生するグルタミンは、SNAT3を介し胎児へ供給されていると推察される。これまで胎児へのグルタミン供給ルートとして示唆されているGlu-Gln cycleに関与するトランスポータは不明であった。しかしながら、今回得られた結果から、妊娠初期の胎盤ではSNAT3がその役割を担っており、協調的に機能していることが示唆された。
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