女性に多い疾患である更年期障害、骨粗髭症や関節リウマチ症においてエストロゲンの関与が指摘されているが、ER遺伝子多型との関連についてはエビデンスが少ない。そこで、ER遺伝子多型との相関が病態や処方薬剤との間に認められれば、病因と薬物療法選択にエビデンスを与えることができる。 本年度はER遺伝子多型と更年期障害との相関を明らかにするために、研究協力者天野恵子より提供を受けた127検体についてERβ遺伝子CAリピート等の多型解析を行った。ERβ遺伝子CAリピート多型のうちリピート数21以下をSsgenotypeとした。Ssgenotype患者は血管運動神経症状の自覚スコアがLlgenotype(22以上)に比べ有意に高く、症状が強い群の割合も高い傾向を示した。このことから、血管運動神経症状の発症リスクに対するCAリピート多型Ssgenotypeの関連性が示唆された。 一方、ERβ遺伝子Rsa多型解析の結果、AAgenotypeの患者は血管運動神経症状の自覚スコアがGGgenotypeに比べ有意に高く、症状が強い群の割合も有意に高かった。このことから、血管運動神経症状の発症リスクに対するRsa多型AAgenotypeの関連性も示唆された。また、CAリピート多型およびRsa多型の間に連鎖不平衡の傾向が見られ、血管運動神経症状の発症リスクに対する上述の相関がハプロタイプおよびデイプロタイプとなった際にも認められた。 さらに、更年期障害治療における処方薬剤実態調査の結果、CAリピート多型SSgenotypeおよびRsa多型AAgenotypeにおいてホルモン製剤の使用率が有意に高いことが示された。このことから、両genotypeが血管運動神経症状のリスクを反映し、ホルモン製剤という治療薬の選択に応用できる可能性が示唆された。
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