研究課題
女性に多い疾患である更年期障害、骨粗鬆症や関節リウマチ症(RA)においてもエストロゲンとの関連が指摘されているが、ER遺伝子多型との関連についてはエビデンスが少ない。ER遺伝子多型との相関性が病態や処方薬剤との間に認められれば、病因と薬物療法選択にエビデンスを与えることができる。本年度はER遺伝子多型とRA処方との相関について検討した。RA患者264名(男性53名、女性211名)及び変形性関節症(OA)患者174名(男性19名、女性155名)を対象にERβ遺伝子Rsa多型及びERβ遺伝子CAリピート多型について頻度分布を解析した。その結果、ERβ遺伝子Rsa多型について、男性では両患者とも同様の頻度分布であったのに対し、女性では重症RA患者において軽症RA患者およびOA(変形性関節炎)患者とは異なりGG genotypeの頻度が有意に高かった。このことから、Rsa多型と女性における重症RAの発症に何らかの関与がある可能性が示唆された。さらに、RA患者とOA患者間のERβ遺伝子CAリピート多型の頻度分布の差を検討したところ、ERβ遺伝子CAリピート多型について、RA患者とOA患者との間に頻度分布の差は認められなかった。そこで、Rsa多型についてRA患者群を重症度別に比較した。この検討では各群の間にgenotype頻度の差は見られなかったが、OA患者のものと比較すると、重症RA患者においてGG genotypeの頻度が有意に高く、症状に応じてgenotype頻度の分布傾向に有意な差が見られた。また性別で層別化すると、OA女性患者と比較して重症RA女性患者はGG genotypeの頻度が有意に高いことがわかった。以上の結果から、Rsa多型GG genotypeは、女性において重症RAの発症に何らかの関与を示す可能性が示唆された。
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