研究概要 |
これまでに申請者は,脂肪肝炎の病態では注目されていなかったNADPHオキシダーゼ(NOX)複合体由来の活性酸素種が脂肪肝炎を進展させる可能性があることを報告した.NOX複合体は,肝細胞自身に加えて,肝臓に存在するマクロファージ(クッパー細胞)に多く発現している.これまでに,マクロファージが脂肪酸やリポポリサッカライド(LPS)によって異常に活性化され,活性酸素種を大量に産生することが報告されており,NASHの病態進展にも寄与している可能性がある.そこで,本研究では,マクロファージの活性化に及ぼすNOX阻害剤,および抗酸化剤の効果を検討することとした. LPSにより活性化させたマウスマクロファージ細胞株RAW264.7にNOX阻害剤(apocynine),および抗酸化剤(alpha-tocopherol, N-acetyl-L-cysteine, hypotaurine,およびtaurine)をそれぞれ処置し,マクロファージ活性化の指標であるiNOS,IL-6,TNF-α mRNA発現量をリアルタイムPCR法で測定した.その結果,apocynineは,LPSによるiNOS,IL-6のmRNA発現増加を抑制した.また,抗酸化剤のうち,N-acetyl-L-cysteine,hypotaurine,およびtaurineもapocynineと同様の抑制効果を示した.これらの結果から,NOX阻害剤および抗酸化剤によって,マクロファージの活性化を抑制出来る可能性が明らかとなった.さらに,初代培養幹細胞とマクロファージの共培養培養上清中の活性酸素種を定量する予定である.
|