研究課題/領域番号 |
20590142
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
松永 民秀 信州大学, 医学部附属病院, 准教授 (40209581)
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研究分担者 |
大森 栄 信州大学, 医学部附属病院, 教授 (70169069)
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キーワード | 薬物代謝酵素 / シトクロムP450 / CYP3A / 妊婦 / 胎児 / 薬物動態予測モデル / 胚性幹細胞 / デスフェロキサミン |
研究概要 |
薬物代謝酵素は、薬物動態に大きな影響を及ぼす因子として知られている。本研究は、薬物代謝型シトクロムP450(CYP)の主要な分子種であるCYP3Aの胎児における発現調節機構を解明すること、そして最終的に妊婦に対する医薬品の適正使用およびより安全な医薬品の開発に資する胎児の薬物動態予測モデルを構築することを目的としている。平成20年度は、胎児にとって出生に伴う最も大きな環境変化の1つである血中の酸素分圧に着目し、CYP発現調節機構との関連性を解明することにした。また、胎児の肝細胞モデルを作成するために、サル及びヒト胚性幹細胞(ES細胞)の肝細胞への分化を試みた。ヒト胎児肝細胞は、胎齢約13週の6胎児肝混合を用いた。細胞を播種後、擬似低酸素惹起化合物の塩化コバルト(CoCl_2)あるいはデスフェロキサミン(DFO)を経時的に添加し、CYP3Aの発現に及ぼす影響について検討した。低酸素誘導因子Hypoxia-Inducible Facter-1(HIF-1)についてはクロマチン免疫沈降(ChIP)法で検討した。CYP3A7及びCYP3A4においてDFO(50μM)を72時間処理することによりmRNAレベルで5.1倍の有意な誘導がみられた。しかしCoCl_2では、CYP3Aの誘導はみられなかった。そこでCYP3A誘導に関与する転写因子PGClα、HNF4α、PXRのmRNAレベルでの検討を行ったが、誘導はみられなかった。またChIP法では、HIFがCYP3A遺伝子上のコンセンサス配列に結合しなかった。以上の結果より、擬似低酸素物質DFOの添加によるHFLのCYP3A7及び3A4誘導には、HIFを介さない特異的な誘導機構があることが示唆された。また、サル及びヒトES細胞より肝細胞と同様なCYPの薬物応答性を示す細胞に分化することができた。本細胞は今後肝細胞研究のモデルとして有用であることが示唆された。
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