研究課題/領域番号 |
20590143
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
奥田 真弘 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (70252426)
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研究分担者 |
岩本 卓也 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (30447867)
平工 雄介 三重大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (30324510)
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キーワード | 肝虚血再灌流 / シクロスポリン / Trolox / 酸化ストレス / CYP3A / P-糖タンパク質 / シメチジン / OCT2 |
研究概要 |
我々はこれまでに、肝虚血再灌流(肝I/R)モデルラットを用い、免疫抑制薬シクロスポリンA(CsA)の消化管吸収動態を検討した結果、肝I/Rラットでは、CsAの消化管吸収が有意に低下し、その要因が小腸粘膜に発現する薬物代謝酵素(CYP3A)活性及びP-糖タンパク質(P-gp)発現量の上昇に起因することを明らかにしている。そこで、肝I/RラットにおけるCsAの吸収低下における酸化ストレスの役割を検討するため、肝虚血後、再灌流開始5分前に投与した抗酸化剤Trolox(α-トコフェロール誘導体)の影響を、Trolox非投与ラットと比較検討した。Troloxを投与したラットでは、肝I/Rによる血漿中malondialdehyde(脂質過酸化の指標)の上昇が抑えられた。肝I/Rにより低下した経口投与後のCsAの血中濃度曲線下面積(AUC)は、Trolox投与によりShamラットと同等レベルに回復した。Trolox投与したラットでは、肝I/Rによる小腸粘膜のCYP3A活性及びP-gp発現量の上昇は認められなかったことから、肝I/R障害時の小腸粘膜におけるCYP3A活性並びにP-gp発現量の上昇は酸化ストレスに起因することが明らかになった。 次に、酸化ストレスが腎薬物動態に及ぼす影響を明らかにするため、腎排泄型薬物であるシメチジンの体内動態に及ぼす肝I/R後の影響を検討した。肝I/R処置12時間後のラットにシメチジンを8mg/kgを大腿静脈から瞬時投与した後、経時的に採血し、血漿中シメチジン濃度を測定したところ、AUCが有意に上昇しクリアランスの低下が認められた。腎尿細管に発現する有機カチオントランスポータrOCT2の発現量は、肝I/RラットではShamラットに比べて減少していた。このことから、肝I/R時のシメチジン血漿クリアランスの低下には、rOCT2を介したシメチジンの尿細管分泌の低下が考えられた。
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