研究概要 |
Na^+依存性グリセロール(glycerol)トランスポーターの同定を目指し,1)発現クローニング,2) in silico EST検索で見い出した候補遺伝子のRT-PCRクローニング,を昨年度に引き続き行った. アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用い,HCT-15細胞由来のmRNAの導入によるglycerol輸送活性の誘導を検討したが,再現性良くglycerol輸送活性を検出するには至らなかった.同類のNa+依存性glycerolトランスポーターが存在するとみられるラソト小腸からの全mRNAを用いた検討では,導入mRNAに由来するglycerol輸送活性の上昇傾向がみとめられたが,該当のmRNA(cDNA)を絞り込む作業を進めるのに十分なレベルではなかった.mRNAの精製他の各種要因等について再検討し,最適な条件設定を試みているところである. 発現クローニングと並行して,in silico EST検索による方法も継続して行った.候補となり得る機能未知のトランスポーター様タンパク質をコードする遺伝子を検索したうえで,臓器分布に関するデータベース情報を利用して候補を絞り込み,新たに10の遺伝子のcDNAをRT-PCRクローニングにより得た.しかし,HEK293細胞への一過陸導入によりglycerol輸送活性を誘導する遺伝子を見い出すには至らなかった. なお,関連の成果として,Na^+依存性glycerolトランスポーターと連携して腸管でのglyoerol動態に関わっている可能性が考えられるアクアポリン10(AQP10)がトランスポーター的機能とチャネル的機能を併せ持つというユニークな性質を持つことが,新たに見い出された.興味深い知見であり,glycerol輸送に関わるトランスポーター群の全容解明に役立つものと考えられる.
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