平成20年度の当初計画としては、ヘアレスラットのin vivo経皮吸収実験とブタ摘出皮膚を用いたin vitro摘出皮膚透過実験を実施する予定であったが、平成21年度以降に計画している3次元培養皮膚を用いた人工皮膚モデルを構築するための予備的検討がより重要であるとの考えのもと、人工膜を積層することにより人工皮膚モデルを構築し、その系を用いて、薬物の皮膚透過に及ぼす要因の検討を行った。すなわち、モデル薬物としてタクロリムスと同様タンパク結合性が高い抗炎症薬であるフルルビプロフェンを用い、脂溶性のバリアである角質層を模したシリコーン膜の下、生きた表皮のモデルであるセルロース透析膜を積層し、さらにその間にマイクロダイアリシスのプローブを挿入して、皮膚透過過程における膜組織内の濃度分布の理論値と実測値の比較を行った。実験の結果理論値と実測値はよく一致し、本モデルが皮膚内薬物濃度分布を評価する実験系として妥当であることが示された。さらに、皮膚の炎症を模すため、組織間にウシ血清アルブミン溶液を注入し、その層を通過することによる薬物皮膚組織透過性への影響、及び組織内濃度の時間推移とアルブミン存在部位との関係について検討を行い、本実験系が炎症部位における薬物皮膚透過を研究する目的でも使用可能であることが示された。これらの検討では、マイクロダイアリシスのプローブは、主に組織内薬物濃度の測定のために使用したが、これを皮膚組織内の血管に対応させ、薬物の経皮吸収に及ぼす血流速度の影響の評価にも本実験系は応用可能である。
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