研究概要 |
本研究はミクログリアの脳への選択的移行特性を利用した脳内特異的ドラッグデリバリーシステムの開発を目的としている。しかしながら、現時点において、ミクログリアの持つ血液脳関門(BBB:blood-brain barrier)通過機能に関与する分子実体は明らかになっていない。そこで、20年度は効率よくミクログリアの持つBBB通過機能に関与する分子実体の解明を行うために、BBBを構成している脳毛細血管内皮細胞(株化したものを使用)をin vitroでミクログリアが通過するアッセイ系を用いて走化性因子の解析を行った。脳内においてはミクログリアの化学走化性因子の1つとして核酸であるATPが関与していることが報告されている。そこで、ミクログリアのBBB通過機構におけるATPの濃度依存性および時間依存性について検討を行った。トランスウェルの下部チャンバーに100μM, 10μM, 0μM ATPを加え、上部チャンバー上には脳毛細血管内皮細胞とミクログリアを共培養し、ミクログリアの脳毛細血管内皮細胞通過に対する影響の検討を行った。その結果、濃度依存的にミクログリの脳毛細血管内皮細胞通過能の上昇が観察された。また時間依存性については24,48および72時間の3点で検討を行い、ミクログリアの通過率および脳毛細血管内皮細胞の状態からミクログリアと脳毛細血管内皮細胞との共培養時間は24時間が最適であると判断した。さらに、ミクログリアが脳毛細血管内皮細胞を通過する様子を観察する系を確立するために細胞蛍光標識試薬の検討を現在行っている。
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