これまでに日本人集団で同定されているCYP2D6バリアントアレル17種類について、遺伝子多型が酵素機能に与える影響をin vitroで検証した。まず、ヒト肝cDNAライブラリーを鋳型として、野生型及びバリアントCYP2D6発現クローン(CYP2D6*2、*10、*14A、*14B、*18、*27、*36、*39、*47、*48、*49、*50、*51、*53、*54、*55及び*57)を作製した。野生型及びバリアントCYP2D6をCOS7細胞で発現させ、遠心法によりミクロソーム画分を調製した後、抗CYP2D6抗体を用いたイムノブロット法により発現タンパク質を確認した。次に得られた各発現タンパク質を用いてCYP2D6の特異的な基質であるBufuralol及びDextromethorphanをin vitro代謝させ、各バリアント酵素のキネティックパラメータ(Km、Vmax)を算出した。 その結果、野生型及び今回構築したすべてのバリアントCYP2D6の発現が確認できた。CYP2D6発現量は大部分のバリアントにおいて有意な低下が認められた。また、酵素活性測定の結果、酵素機能が野生型と同程度のバリアント4種類(CYP2D6.2、27、39及び48)、低下あるいは欠損するバリアント12種類(CYP2D6.10、14A、14B、18、36、47、49、50、51、54、55及び57)、上昇するバリアント1種類(CYP2D6.53)を明らかとした。これらのアレルを有する場合、CYP2D6で代謝される薬物の体内動態が変化し、副作用発現や薬効に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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