これまでに日本人集団で同定されているCYP2B6バリアントアレル26種類について、遺伝子多型が酵素機能に与える影響をin vitroで検証した。まず、ヒト肝cDNAライブラリーを鋳型として、野生型(CYP2B6*1)及びバリアントCYP2B6発現クローン(CYP2B6*2~*28(*22を除く))を作製した。野生型及びバリアントCYP2B6をCOS7細胞で発現させ、CYP2B6の特異的な基質である7-ethoxy-4-trifluoromethylcoumarinをin vitro代謝させ、その代謝物をHPLC-蛍光検出器で定量し各バリアント酵素のキネティックパラメータ(Km、Vmax、CLint)を算出した。その結果、CYP2B6.8、CYP2B6.11、CYP2B6.12、CYP2B6.13、CYP2B6.15、CYP2B6.18、CYP2B6.21、CYP2B6.24及びCYP2B6.28の酵素活性は検出限界以下となった。野生型及びその他のバリアントではMichaelis-Mentenの式に従うことが示された。CYP2B6.12のG99E置換及びCYP2B6.24のG476D置換では基質結合能が変化し酵素活性が消失することが考えられた。また、CYP2B6.8及びCYP2B6.13に共通のアミノ酸置換であるK139Eではタンパク質の立体構造が大きく変化し代謝活性が消失したと考えられた。CYP2B6.28は終止コドン生成により未成熟なタンパク質が生成すると考えられるため、酵素活性が消失すると考えられた。したがって、CYP2B6遺伝子多型の中で酵素活性に変化を及ぼす原因となるアレルを有する場合、CYP2B6で代謝される薬物の体内動態が変化し、副作用発現や薬効に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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